ルパン三世のテーマ '78
現在、甲子園で高校野球の熱戦が繰り広げられている。アルプススタンドでは各高校が応援にしのぎを削り、ブラバンはまさに熱い演奏をしている。様々な定番曲があるけれども、中でも有名なのは"ルパン三世のテーマ '78"
言わずと知れた有名アニメのテーマ曲。ルパン三世の話になると、第1期の方が大人で渋いとか、カリオストロの城がなんたって一番とか、うるさがたの話(笑)で持ちきりになるので、他の機会に譲るが、この第2期のテーマ曲が吹奏楽に好まれて取り上げられるのは、やはり作曲者の大野雄二(1941年生まれ)に依るところが大きいのではないだろうか。
彼は元々慶応義塾大学のビッグバンド・ライトミュージックソサエティに所属していたジャズ畑の人。そしてしばらくはジャズをやっていたが、途中からCMソングを多く手がけるようになった。有名なところでは「レディボーデン」や「きのこの山」(ともに1975年頃?)。以前彼がラジオのインタビュー番組で次のようなことを言っていた。
デビュー当時のジャズは自分の好きなように曲を書いたり、演奏したりしたが、CMソングの仕事をはじめてからは、相手の求めるイメージにそって、様々な制約(画面に合わせて音楽を展開したり、商品名を分かりやすいメロディーに乗せるなど)の中で曲作りをしてきた。その蓄積がなければ、到底、劇伴はやれなかっただろう、と。
うろ覚えだが、その番組で、一番最初にやった劇伴の仕事が「犬神家の一族」(1976年)だと言っていた。あの独特な古き日本の湿っぽい曲調は、ルパン三世のテーマとはだいぶかけ離れた曲調である。僕が子供の時、わぁ~豊かな外国の世界だなぁと思った「レディボーデン」の女性コーラスと牧歌的な「きのこの山」の『きのこのこのこ、たぬきのこ』の歌が対極的であるように。この幅広さがCM ソングを多くこなしてきた成果かもしれない。そして、表面上はバラバラな曲調でも、総じて共通するのはポピュラリティがあるところだ。
だから、ビッグバンド出身の大野雄二が数多くのCM ソングの仕事で獲得したポピュラリティをもとに作った"ルパン三世のテーマ '78"は応援吹奏楽と親和性が高いのではないだろうか。
ただ、以前、同年代の吹奏楽関係者の友人から「基本的に吹奏楽は生真面目だから、曲をカチッとやる傾向があるんだよね。だから、ポピュラーソングをやる時はいまいちノリが悪い。それでも、俺たちの頃は、"なんちゃってポピュラー"をやろうという気持ちがあったんだけど、コンクール至上主義が助長されたせいか、年々きっちりやろうという姿勢が強くなって、今の子はポピュラーのノリがやれなくなってきてる気がするんだよね」といったことを聞いたことがある。その時、もしそれが本当のことなら、さみしいことだなと僕は思った。このことの正否は議論が分かれるところかもしれないが、ただひとつこういうことは言えるのではないか。
元々、音楽は自分の感情を表現する手段のひとつなのだから、ポピュラーのノリ(曖昧な表現かも知れないけれど)を演奏するときは、楽譜をキッチリ再現することだけに終始するのではなく、その音楽が何を聴衆に伝えたいのかを咀嚼して、自分のものにして、演奏した方が聴く者の心により深くより広く届くんじゃないかなぁ。。。
[2017/08/19 SAT Facebook 投稿を再掲載]