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アンサンブルの魅力 後編

 先日8/27(日)東神奈川にある“かなっくホール”で開かれた「第1回 横浜国立大学管弦楽団 管打楽器セクションコンサート」を聴いてきました。このコンサートは二部構成のアンサンブル。第一部を『アンサンブルの魅力 前編』として紹介しました。今回は後編として第二部をレポートします。

 第二部は圧巻の幕開け。打楽器三重奏。山本教生作曲の「パルス」である。3人の打楽器奏者が正三角形に位置し、お互い目配せをしながらも、一気呵成にパーカッションを打ち鳴らし続けるのである。あまり吹奏楽アンサンブルの鑑賞歴がない自分にとっては初めての経験で、シンプルなのに、いやシンプルゆえに圧倒されるパーカッションアンサンブルだった。いくつになっても、新鮮な感動ができるというのは幸せなことである。

 2曲目は「木管五重奏曲 Op.79 1・2楽章」で19世紀後半ドイツ・ロマン派の流れをくむクルークハルトが作曲した作品。ロマン派らしく変化に富んだ曲調で個人的には1楽章でひたすらベースを支えるファゴットと高音を鳴り響かせるフルートが印象に残った。そして、2楽章途中で魅せるフルートと他の楽器との掛け合いがアンサンブルの妙だと思った。ぜいたくを言えば、木管五重奏の中で唯一同じ構造(ダブルリード)のオーボエとファゴットのみではじまる3楽章も聴いてみたかったなぁ。

 3曲目はフルートアンサンブルでトリプルあいす(八木澤教司作曲)。フルート三重奏曲である。リードを持ち回りで担当したり、主旋律を受け渡ししたり、少人数ならではのアンサンブルを楽しめた。フルートの美しい音色を遺憾なく発揮できる作品だが、少人数ゆえ一人ひとりの責任が重いとも言える。奏者にはやりがいとプレッシャー両面あったのかもしれないとつい想像してしまった。

 4曲目は意表を突く選曲に驚かされた。しかし、聴いてみたら、楽器の音色にぴったりな曲だなと納得。オーボエによる「いつも何度でも」である。ジブリ映画「千と千尋の神隠し」の主題歌として多くの人の耳に残る曲である。オーボエによる主旋律が木村弓の声を思い出させてくれる。そして、オーボエの重奏がジブリのあたたかさをうまく表現している。

 5曲目、6曲目は管楽器中低音倶楽部による実演と形容したくなる。トロンボーン・チューバアンサンブルで、B.Lynn作曲「Four for Fourより第4楽章」とA. Guilmant 作曲「交響的小品」である。前者はポピュラーな曲調、後者はクラシックな趣を持った曲だった。トロンボーンの音が好きなので、違ったタイプの曲を聴けて、うれしかった。特に「交響的小品」において、主旋律のトロンボーンを、はじめ物悲しく、中盤では一転朗らかに吹くところに心動かされた。チューバのバッキングもいい味を出していた。おもわず中低音万歳と心の中で喝采を送ってしまった。

 大団円は管楽12重奏、ベートーベン「交響曲第1番より第1楽章」。管楽12重奏ともなると壮観な眺め、迫力のある響きである。プチ・オーケストラとでも呼べば良いか。最後にふさわしい演目だった。そして全体の構成が良かった。基本的に編成を小さいものから大きいものへ、曲目を硬めのもの、柔らかめのものを取り混ぜて、飽きさせない。第一部、第二部ともに1時間弱で、休憩時間含めて2時間に収まっていた。ともすると演奏曲数を欲張って3時間近くになるコンサートがある中でこの長さは心地よかった。もちろん、様々なアンサンブルを堪能できたのが心地よさの一番の理由なのは言うまでもない。

 そんな心地よさでホールを後にするとき、ふと、国大オケにいた友人の言葉を思い出した。「その場でお互い目配せをしながらやるアンサンブルは生々しくてピリピリしていて、あの時にしか味わえないものがあるから好きなんだよなぁ・・・」きっと、それがアンサンブルの魅力のひとつなのだろう。そのことを思い出させてくれた「国大オケ 管打楽器セクションコンサート」に感謝。どうもありがとう!

※作曲者などを敬称略とさせていただきました。

第1回 横浜国立大学管弦楽団 管打楽器セクションコンサート

2017年08月27日 SUN 13:30開演

神奈川区民文化センター かなっくホール

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